王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~






「フレデリック坊ちゃん、嬢ちゃんにはああ言ったが、あの傷では痕が残らん訳がない」

 戻った俺に、居間で待っていたマキロンが、開口一番で告げた。

「若い娘を相手に、何という所業をしてくれたのか……。本当に儂ゃ、怒りで手が震えそうじゃったわい」

 マキロンの言葉で、俺の拳もまた、新たに湧き上がる怒りで震える。

 生きたエミリーをこの手に抱き上げた時、命があっただけでも良かったと、そう思った。けれど今、一生消えぬ傷を残させてしまった事に、どうしてもっと早く助けてやれなかったのかと、苦い後悔ばかりが浮かぶ。

「フレデリック坊ちゃん、自分を責めるでない。儂ゃ詳細を知る訳じゃないが、それでもあの首の指痕を見りゃ分かる。あんたがおらにゃ、嬢ちゃんは生きてはおらんかったじゃろう。こうして今、嬢ちゃんの命があるのはフレデリック坊ちゃん、あんたのお陰じゃて」

 黙り込んだ俺の肩を励ますように叩き、老医師は皺を深くして笑ってみせた。



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