王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
「う~む、仕方ない。儂の取り分が少なくはなるが、せっかく帰城しているのだから、フレデリックにも分けない訳にいかんな」
興奮気味に父が語る。
「割れば瑞々しい香りが部屋中を満たし、一度口に含めば蕩ける甘さが口内に満ち満ちる。爽やかな甘さと後味を残し、ツルリと喉を下るそうだ」
尚も興奮気味に言い募る父の言を、言葉半分に聞きながら、けれどここでふと思い至る。
口当たりのいい果実は、病床のエミリーも比較的食が進む……!!
あの桃を、エミリーに食べさせてやりたい……!
なんとしても、桃を得たい! 俺の中で、一気に桃の価値が跳ねあがる。獲得のための算段を巡らせた。
「……ちなみに父上、ひとつだけ実を付けたという農園主の言は嘘です。それを聞くに、明らかに農園主はこの桃を実際に割り、口にしています」
「なっ!!」
俺の言葉に、父は目を皿のように見開き、次いでその目を涙で潤ませた。