恋人未満のこじらせ愛
そのまま書類の山を崩すように仕事をこなし、昼休みを迎えた。
私はいつも佐々木さんとお昼に行く。
元々佐々木さんは入社当時からの教育係だったので、佐々木さんとペアを組んで仕事をすることが多かった。その流れで今でも一緒にお昼を取る習慣がある。

同期の女子も何人か居るけれど、何というか肌が合わないというか…。
キラキラしている人種が少し苦手な私は、彼氏がだの合コンがだのと言った話題が苦手だ。
だから言い方が悪いがそのようなことと無縁の、うちの部署の人たちと居ることが多くなった。


ビルの共同社食みたいなレストランは十階にあって、このビルのテナントの人たちがよく利用している。
私も佐々木さんも、毎日ここでお昼を取っている。まぁまぁの味でお財布に優しいから、重宝しているのだ。

「菅原さん、引き継ぎ大丈夫そうかな?」
佐々木さんが定食の鮭をつまみながら聞いた。

「うーん、大丈夫じゃないでしょうか?元々やってた業務を返すだけですからね」

「でも育休明けってなかなか上手くいかないわよ。感覚忘れてるし、おまけにしょっちゅう子供は風邪引くし。
うちは両親同居だけど、それでもやっぱり慌ただしかったからさー」
佐々木さんは『会社が唯一の息抜きできる場所』らしい。
母親業と会社の両立は、いくら人手があっても大変だと常々聞いている。
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