恋人未満のこじらせ愛
大村先輩の言いかけた言葉を遮って、私は勢いよくバンっと立ち上がる。


「じゃ、お先に失礼します」

睨み付けるように大村先輩を見た後、佐々木さんと江浪さんにはにっこりと微笑み、トレーの返却口へと歩く。

なぜ月一のアレも把握されているのか。
少し怒りをぶつけるように乱雑にトレーを返却すると、一目散にエレベーターホールへと向かう。

ごった返すエレベーターホールで順番を待っていると、色々な会話が耳に入ってくる。

「彼氏がさぁ、一緒に旅行に行こうって!初旅行!」

「この前家に泊まってさぁ、手料理を作ってあげて…」

私と同年代の会話は、こんなものばっかりだ。


私達は、こういうことをする間柄ではない。

一緒にいる時間は長い。だけど─ちっとも距離は縮まらない。
『あの時』のまま、ずっと。


ただ、それで私は満たされている、と思う。

それ以上、何も望んではいないのだ。


──いや、望んではいけないのだ。
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