恋人未満のこじらせ愛
二人に対する復讐心、やり返したという満足感、亜弥子先輩への嫉妬心、人気のある大村先輩という優越感、浮気された寂しさの埋め合わせ


多分どれも正しい気持ちだった。


ただそれを全て忘れるぐらい──私はその時間が幸せだった。
歴代の彼氏の誰よりも、囁く甘い言葉。優しく頭を撫でる手。
大きくて、逞しい腕に包まれる安心感も。


亜弥子先輩はバカだ。
私なら、絶対に手放せないのに。
絶対に──この人以外に抱かれたいなんて思わないだろうに。

ひとしきり肌を重ねた後、夜明けまで抱き合ってベッドの中にいた。


できればずっとこうしていたい。
だけど、タイムリミットの夜明けが近づいてきていた。

いつだか「智也は一度寝ると起きない!」と嘆いていた通り、大村先輩は全く起きる気がしない。バタバタと帰りの準備をしても、びくともしない。
電池がプツリと切れたようだ。


始発電車が動いているのを確認すると、私は大村先輩の部屋を後にした。


外はまだ薄暗い夜明けの空。
吹き付ける風に、喉の奥がツンとなる。


今の私の状態は『彼氏に浮気された日の朝』しかもクリスマスだ。
本当なら、悲しみで一杯のはずだ。

でも──不思議とそのような気持ちにはならなかった。
悲しみではなく、あのさっきまでの温もりが名残惜しくて……それだけが残るクリスマスの朝だった。
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