三途の川のお茶屋さん
すっくと立ちあがった太一様の目は諦観していた。全てを、諦めと共に受け入れて、穏やかに凪いでいた。
「神威様に、一目会っていかれないのですか?」
「会わす顔などないわ。かような愚を犯し、どの面下げて会いに行けと言うのだ。この足で人界に下るわ。ではな」
天界の最長老は欠片の未練がましさも見せず、俺に背を向け、三途の川に向かって歩き出した。
その背を、娘が追った。
「小町、其方はいいと言うておろうに? ここに残れ?」
「かつて私は、いつまでもどこまでもご一緒しますと、そう申し上げたではないですか? でまかせや安易な思いつきではございません。これは譲りません。ご一緒、いたします」