三途の川のお茶屋さん
衝撃から立ち直り、少し余裕を得たのか、太一様は冗談めかして言った。
「太一様、勘違いをしておられます。俺は女神に固執したのではありません。俺は幸子だから、譲らないのです。太一様、貴方は女神に固執するあまり、最も肝心なところが分かっていない」
けれど俺がどれだけ説こうと、太一様は分かろうとはなさらないだろう。
「太一様、天界に愚を犯した貴方の居場所はもう、ありません」
唯一、太一様にそれを教えられるのは俺ではない。
「はははっ、我に人の世に下れと言うのか。権天神の末路としては、最も不名誉で、そして我の末路としては上出来だ。……しかし十夜、天界と人の世は同じだなぁ?」
? 人界に下る事を屈辱としながら、同じと語る。
「人の世と同じ、神の世もいまだ悪しき風習のまま、年功序列で老害が蔓延っておろう? 若輩というだけで、其方を軽んじる阿呆ばかり。我も、そうであったろう? のう十夜、我の神通力を歯牙にもかけぬ、其方の力が末恐ろしい。けれど我がこの後、それを見聞きする機会は永遠にないだろう。達者であれよ」