三途の川のお茶屋さん


「これこれ十夜、握り込むでない。折角映る映像が消えてしまう」

!!
慌てて握り込んだ手を離す。

「す、すいません!」

息を呑んで何も映さなくなった宝珠を見つめていれば、しばらくしてまた、宝珠は映像を映し出す。

宝珠にはまさに今、俺が知りたくてたまらない幸子の現状が映し出されていた!!

幸子は両手を拘束された状態で揺れる船底に倒れていた。

「幸子っ!」

こちらから見る限り、幸子に大きな怪我は見受けられない。

俺が胸を撫で下ろしたのもつかの間、幸子に程近い客用の長椅子の下から、ズルリと何かが這い出て来た。

なんだ!?

神威様と二人、思わず宝珠に食い入るように顔を寄せた。

襤褸のムシロに包まれたそれは、……人? ……いや、あれは!

「タツ江婆!?」

懸人と幸子の乗る船には何故か、タツ江婆がいた。



< 273 / 329 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop