三途の川のお茶屋さん


***


霞む意識の中で、十夜の声を聞いた気がした。

次の瞬間、息堰き止められる苦しさと、私に圧し掛かる懸人さんの重みが、消えた。

「幸子! 無事かっ!?」

一気に肺に空気が流れ込む。私は盛大に噎せ込んで、苦しさにもんどりうった。

十夜が私を抱き起こし、しきりに背中を擦っていた。

「あぁ、幸子っ……幸子、よかった! ……よかったっ!!」

十夜に背中を擦られながら、どれほどそうしていただろう。

いまだ呼吸は荒く肩が上がっていたけれど、私は段々と落ち着きを取り戻していた。

「……十夜っ」

また十夜の温もりを感じられる事が、切ない程に嬉しかった。この温もりを手離したくなくて、縋る腕に力を篭めた。

「幸子」

十夜も私を抱く腕にキュッと力を篭めた。

苦しさじゃない、この瞬間の歓喜が、眦に新たな涙を滲ませた。



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