三途の川のお茶屋さん
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霞む意識の中で、十夜の声を聞いた気がした。
次の瞬間、息堰き止められる苦しさと、私に圧し掛かる懸人さんの重みが、消えた。
「幸子! 無事かっ!?」
一気に肺に空気が流れ込む。私は盛大に噎せ込んで、苦しさにもんどりうった。
十夜が私を抱き起こし、しきりに背中を擦っていた。
「あぁ、幸子っ……幸子、よかった! ……よかったっ!!」
十夜に背中を擦られながら、どれほどそうしていただろう。
いまだ呼吸は荒く肩が上がっていたけれど、私は段々と落ち着きを取り戻していた。
「……十夜っ」
また十夜の温もりを感じられる事が、切ない程に嬉しかった。この温もりを手離したくなくて、縋る腕に力を篭めた。
「幸子」
十夜も私を抱く腕にキュッと力を篭めた。
苦しさじゃない、この瞬間の歓喜が、眦に新たな涙を滲ませた。