三途の川のお茶屋さん



だけどおばちゃんの漏らした不安は十年後、現実となって襲い掛かった。おばちゃんには漠然と、けれどある種の予感めいたものがあったのだろうと、今では感じている。

娘を亡くしたおばちゃんは、ろくに食わなくなって、眠らなくなった。輪廻に投げられてしまったから、娘さんの骸もなかった。

だけどおばちゃんには泣く間もなかった。おばちゃんは懸人の嘆願のために方々を駆けずり回り、天界中の識者に頭を下げた。

来る日も来る日も、おばちゃんは地面に額を擦り付けて天界中を回った。

これにより懸人には、犯した罪を鑑みれば異例中の異例といえる軽い処罰が下された。

懸人の沙汰が決まるとすぐに、おばちゃんは暮らしていた屋敷を出た。おばちゃんは一人天界の西に聳え立つ死出の山に移ると、誰も寄せ付けず、世を捨てたみたいに侘しい暮らしを始めた。

おばちゃんの旦那さんが戻るように何度説得しても、おばちゃんは首を縦に振らなかった。

ついにはおばちゃんの旦那さんまでもが役職を辞して、死出の山に移り住んだ。




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