三途の川のお茶屋さん
ハンカチの隅っこには、老齢の女性が手にするには少々不似合いな、可愛いクマのキャラクターが刺繍されていた。
そのハンカチを、見間違える訳がない。それは中学生の私が初めて自分の手で刺繍をして、お母さんにあげたハンカチだった。
堰を切ったように、涙が流れた。
「あらあらっ」
いきなり目の前で号泣し、差し出されたハンカチも一向に受け取ろうとしない私に、女性が小首を傾げて歩み寄る。
「どうしたのお嬢さん?」
! 私の正面に立った女性の身長は、私よりも頭半分、低かった。改めて見る女性の姿は、記憶の中のそれよりも、小さくて細い。丸くなった背中に、深く皺の刻まれた女性の微笑みに、ついに嗚咽が零れた。
女性は記憶の中のそれよりも随分と、老いていた。