三途の川のお茶屋さん


私は万感を胸に、お母さんの船出を見送った。

そうして店内に一人になった瞬間、一気に体から力が抜けた。

床にへたり込みそうになる私を、すんでのところで支えたのは十夜だった。

「……十夜」

あぁ、そうか。今日は、店内に一人じゃなかった……。

十夜は無言のまま、私の膝裏に腕を差し込むと、横抱きに抱き上げた。

人一人の重さを腕に抱えても、十夜はまるで揺らがない。重さを感じさせない足取りで、私を奥の席へと運んだ。

「十夜は、これを知っていたんですね。それで、心配してくれてた……」

十夜は壊れ物を扱うみたいにゆっくりと、丁寧に私を座席に座らせる。十夜の目が、優しい光をたたえて私を見下ろしていた。

「さて、何の事だ?」

十夜は知らんぷりをする。



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