キスすらできない。


今のは完全にキスされると思った。

キス以外の何者でもないと思った!

ここでキスしないで何をするんだ!?って思った!!

そんなタイミングに予想を裏切らずに裏切ってくれるのが先生ですよね!?

キスされると完全に逆上せて構えていた私の心が絶賛大ダメージなんですが!?

ううっ、なのに口内に広がるボンボンの超絶に美味しい事と言ったら。

最早、怒っていいのか、嘆いていいのか、喜んでいいのか、悶えたらいいのか。

いや、器用にも全部同時にやってるけども。

本当っ…先生のいじわ

「……ご褒美」

「…………へっ?」

「痛いのを……我慢した」

「…………」

「違うか………我慢させて……悪かった」

「………先生?」

「……期待させて、待たせて………挙句、我慢させて悪かった」

「あ………」

そういう意味のコレか。

口内に広がる甘さは先生なりの謝罪と労わり。

昔からの先生の私の慰め方。

痛い治療の後、注射の後、意地っ張りに強がって平気を装って泣かない私に先生がくれるご褒美の甘味。

いつもは労い一つの甘みが今日は先生の謝罪の甘みもプラスされているらしい。

それを物語る先生のどこか気落ちした眼差しと、労わるように私の頬を辿る指先と。

期待して落ちたのは先生も一緒だろうに。

< 157 / 167 >

この作品をシェア

pagetop