想い花をキミに
今まで気が付かなかったけど、私は見たこともないきれいな部屋のベッドに横たわっていた。病室のようでもあるしそうじゃないようにも見える。

「ああ、ここは俺の知り合いのドクターの診療所の療養室の一つだよ。昔から風邪ひいた時とかに使ってたんだ。普通の病院みたいに堅苦しくなくていいだろ。」

「うん。誰かのお家なのかと思っちゃった。」

「だから病院みたいに変な気張りつめなくても済むんだよ。いやー、でも公園の近くで倒れている人を見つけた時、俺今年はそういう人を見つける年なのかと思ったよ。あ、笑い事じゃないからな。でも顔を見たら亜砂果でさ、本当にビビったよ。」

拳を握りしめながら話す彼を見て、やっぱり隼太が見つけてくれたんだと思った。

「ごめんね迷惑かけて。」

「いや、それはいいけどさ。他にも謝ることあるだろ?」

意に話題を変えられて「ん?」ってなるけど、心当たりはあれしかない。
私は布団を頭の上まで引っ張ると、顔を隠しながら渋々認めた。

「えーっと、その、うん。ごめんなさい、携帯番号のこと。」

「そーだよ。違う番号教えるとかやっぱり変わったやつだと思ったよ。俺の身にもなってみ?かけた瞬間、おかけになった番号は現在使われておりません、って言われるあの悲しさ。」

「ごめんなさい!だってもう会わないと思ってたから。」

「ひど。俺はまた会いに来いよって言ったのに。ま、来なかった時は俺が行くつもりだったけどな。」

「そうなの?」

「うん、まあ。」

と照れ臭そうな声が返ってくる。
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