メガネ君は放課後ヤンキー?!
お昼休み。
いつもなら廊下が混む前の授業が終わってすぐに1人になれる新校舎の非常階段に向かう。
だけど、
今日は先生が高校生の時の話を長々としたせいで授業が長引いてしまった。
使われないだけあって、新校舎は教室からかなり離れたところにある。
次の授業もあるし、今日はこれで我慢するしかない。鞄からイヤホンを取り出して耳につける。
静かな冒頭が流れたのを確認して、お弁当を机に広げた。
音楽を聴いていても、やっぱり教室はうるさくて、特に私の前の席で集まって食べている女子の話は筒抜けだった。
「今日もそれなの?」
「美味しいもん!」
そんなたわいない話から
「もう山下くんかっこいい!」
「いいな〜私も彼氏ほしい」
他人の恋愛事情。
「それ妊娠してるんじゃない?」
「うわぁ心配になってきた」
そんな話私にまで聞こえて大丈夫なの?!?
と、聴いてるこっちが心配になる話まで。
関係ない他人の話だし、別に皆私に関わってくるわけでもないから、教室で食べるのも悪くない。
なんて、強がっていると。
「だから言ったでしょ?
田中くんと付き合ってたんだって!」
「目撃者いるもんね。それは信憑性あるわ」
「えー、私その噂ネタだと思ってた〜。
地味同士とかお似合いすぎて笑う」
「しっ!後ろ!」
見てないから分かんないけど、
女子たちが私を振り返ってる気配がする。
「大丈夫でしょ、ずっと音楽聴いてるし」
「でも一応、ね?」
いやいや、さっきからずっと筒抜けですけど。
「ダメだよ、田中くん関連の人を悪く言っちゃ」
「え、だってアレもネタでしょ?」
「中村さんと付き合ってんのが本当なら、
あの噂も本当でしょ」
「そっか…やば、もうこの話やめよ!」
いやいやいや!聞こえてるよー!
今日の田中くんの行動で、完全に私たちが付き合ってるみたいになってるし!
別に、私には直接害は無いからいいんだけど。