メガネ君は放課後ヤンキー?!


佐倉咲は一言でいえばムカつく女だ。

私が持っていないものを生まれつき、
全部持っている。そんな感じがした。

そのことがめったにない有り難いことだとも知らずにいる。そんな無自覚な女だ。

だからといって佐倉咲の全てが嫌いだという風にはならない。それはそれで、妙に腹が立つ瞬間もある。

でも、なぜだか嫌いになれない。
人の懐に入るのが上手いのだろう。
それが彼女の魅力なのかもしれない。
それはそれで、もっと腹が立ったりもする。

「変わったと言えば、髪染めたよね?」

私がそう言うと佐倉咲は自分の髪を摘んで、

「あー、もう先生がうるさいんで染めました」

なんて、あっさりと言ってのけた。


校則では髪を染めること自体が禁止なはずなのに。

髪の色が人と違うことが校則違反になっているらしい。そのうち彼女のグレーがかった瞳にも文句をつけそうだな。なんて勝手に心配したりする。

「この学校、なにかが変だよね」
「ですよねー、でも染めたら先生に褒められたんで」
そんなことでドヤ顔されてもな。と思いながらも、彼女の素直さに感心した。

「なんだそれ」

私は先生に目を付けられるほど目立っていないから、大丈夫かな。

そんな風に、
彼女の話を聞いて呑気に自分のことを考えていた。


< 63 / 125 >

この作品をシェア

pagetop