決して結ばれることのない、赤い糸
「止みそうにないから、今日はここで解散だね」

「おう」

「わたしは、本屋さんに寄って帰るよ。じゃあ、また明日っ」


駅に向かう優奈とカズに、わたしは手を振った。


好きな作家さんの最新の文庫本を買いに、わたしは本屋さんへ。

無事に購入し、雨に濡れないようにすぐにバッグにしまった。


傘をさして、わたしも駅に向かおうとしたとき――。


降りしきる雨の中、骨の折れたボロボロの傘をさして歩いている男の子を見つけた。

傘がうまく開いていなくてびしょ濡れだ。


黒いランドセルを背負っている小学生。


わたしは思わず駆け寄った。

そして、その男の子の上に自分の傘を広げた。


「風邪引くよ?」


わたしの言葉に、キョトンとして見上げる男の子。


「あ…ありがとう。でもオレ、傘さしてるよ?」
< 186 / 320 >

この作品をシェア

pagetop