決して結ばれることのない、赤い糸
わたしだって、前を開けたラッシュガードから見える隼人の割れた腹筋に、…ドキドキせずにはいられないっ。


「だけど、肌見せすぎ」


口を尖らす隼人。


あれ…?

なんだか…怒ってる?


「なんか羽織るものとかないの?」

「…ああっ。更衣室のロッカーに、パーカーを置いてきちゃった」

「じゃあいいよ。これ着て」


そう言って隼人は、自分が着ていた黒のラッシュガードを脱いでわたしに羽織った。


「…でもこれ、隼人の――」

「いいから着ててっ」


ラッシュガードの正面のファスナーまで、ぴっちりと上まで閉められてしまった。


「…あ、うん。ありがとう」


隼人のサイズだから、袖は余ってブカブカ。

それに丈も長くて、お尻まで隠れるくらい。


ロッカーにパーカーはあるのに、どうして隼人はラッシュガードを貸してくれたのだろう。
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