爽やかくんの為せるワザ




「緒方それ……自分勝手過ぎると思わねぇか?」




そう言ったのはカツだった。

怒った口調で発せられたその言葉に、俺は一瞬耳を疑う。


カツが……緒方に怒ってる?

こんなの、初めてじゃないかな。



緒方がカツに怒るのはよくあることだけど。

……カツが怒るなんて。




「な、何それ……」


「確かに藍とたまちゃんが気まずくなんのは嫌だし、それを心配する気持ちも分かる」


「……」


「でも、緒方がそれを1番嫌がって藍達の気持ちを抑え込むのはちげーだろ」


「っ……」


「藍達のこと考えてるつもりだろうけど、それ自分のことばっかり考えてるぞ。

友達なら、ちゃんと応援してやれよ」




カツが話し終えると、教室内は一瞬しんと静まり返った。


真剣な表情を緒方に向けているカツ。



……ちょっと、びっくりした。

でも、なんだかカツの言葉に安心した自分がいる。



〝友達なら、ちゃんと応援してやれよ〟



俺の為にこんな風に怒ってくれる友達を持って、俺ってすごく幸せ者だったんだなって。


……嬉しい。




「……カツのくせに……」



俯いて小さな声を漏らした緒方に、カツがすかさず「なんだと」と声を上げる。

そして緒方は口元を隠しながら、ゆっくりと頷いたのだ。




「……ごめん、カツの言う通りだわ。私自分勝手だった。

……藍くん、ほんとにごめん」




俺に向き直って、ぺこっと頭を下げた緒方。


俺は首を振って緒方に顔を上げさせる。



……緒方もカツも、俺達のことこんなに考えてくれてるんだね。

なんか、勇気が湧いてくるよ。


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