爽やかくんの為せるワザ

困らせたくない








そして迎えた球技大会当日。



「あー早くぶん投げてぇ」




ぶんぶんと腕を回しながら沙羅ちゃんが呟く。

そんな姿を眺めながら私と桃ちゃんは吹き出した。



沙羅ちゃん、ほんとにやる気満々だなぁ。




「あとちょっとで私らの出番だね。4組との対戦」


「……4組って強い人いるのかな?」


「あー野球部が何人かいるねー。たま気を付けてね」


「う……頑張るっ」




私は逃げることしかできないし、とにかく逃げ切れば良いんだ。


……でも確かダブルボール制なんだよね。

ずっと動き続けなきゃいけなさそうだなぁ。


……大丈夫かな……?




「あ、ほら試合終わったよ」


「しゃー!ぶっ殺すぞぉ!」


「さ、沙羅ちゃんっ!皆怯えてるよっ」




沙羅ちゃんの気合いに周りの皆は「殺されんの……?」と怯えた目でこちらを見ている。

でも沙羅ちゃんは気にならないのか、ギラギラとした目でコートへ向かって行く。


まるで戦士だ。




「……あれ、佐賀くん大丈夫?」


「えっ……」




ふと、近くを歩いていた佐賀くんが目に止まる。


なんだかいつもより元気が無いような……。

顔も少し青白い気が。




「……何が……?」


「体調悪い?」


「…………いや、大丈夫……」




髪で顔を隠すように俯いてしまう佐賀くん。


あれ、私の勘違いだったかな。

あんまりしつこく聞くのもうざいだろうし、大丈夫なら気にしなくていいか。



私はそのまま皆の集まるコートへ向かった。



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