爽やかくんの為せるワザ






――「っくそ、誰かあいつを止めてくれ!」



当てられた4組の男子が腕を押さえながら声を上げる。

その言葉で更に会場は笑いに包まれた。


彼の言う〝あいつ〟とはまさに――



「おうおう、かかってきやがれ」



ボールをバンバン叩きながら笑う、沙羅ちゃんだ。

沙羅ちゃんは試合が始まってから既に5人以上相手を外野に出している。


ここまでドッジボールが得意だったなんて。

沙羅ちゃんすごく生き生きしてる。


と、そこで不意に横からボールが飛んできた。



「っひ!」



私は咄嗟にボールを避ける。


あ、危ない危ない。

ダブルボールだから気を抜く暇なんてないんだった。


なんだかんだ私達3組もかなり人数が減ってきている。


やっぱり桃ちゃんの言ってた通り、4組野球部多いから手強い……。




「足立を倒したら勝ちだああ!」




野球部の1人がそんな声を上げながらこちらに向かってボールを投げた。

沙羅ちゃんは正面から飛んできたボールをばしっと掴む。


しかし、沙羅ちゃんに向かって投げられたボールは1つではなかった。



「痛っ、しまった!」



横から飛んできたボールが沙羅ちゃんの腕に命中する。


ああっ、沙羅ちゃんが!



「っあぶね!」



すると、沙羅ちゃんに当たったボールが落下する寸前で横から敬吾くんがそのボールをキャッチした。


け、敬吾くん!?

すごいっ……、これってセーフだよね!?



「あああ敬吾ぉぉぉ!!」


「はっはっは、そう簡単に足立をアウトにはさせねーぞ!」



4組に向かってふんぞり返ってみせる敬吾くんに、皆「すげー」「かっけーぞ敬吾」と称賛の拍手を送る。


いや、今のはほんとにかっこよかったよ!


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