爽やかくんの為せるワザ



「成瀬さん?どうし――」


「ねー、うるさいんだけどー」




と、不意に聞こえた第三者の声。

シャーッと保健室のカーテンが開かれると、ベッド上に座り込む人影が見えた。



……あ!

藍くんの元カノさん……!?



ふあーっと大きく欠伸をしてこちらを睨みつける元カノさんに、私は慌てて頭を下げた。




「ご、ごめん!誰かいるとは思わなくて……。体調悪いの?」


「別に。ただのサボりだし」




ふんとそっぽを向いてしまう元カノさん。



……気まずい。

最後に話したの、あの中庭の時だし。


あの時は諦めてくれたけど、元カノさんってまだ藍くんのこと好きなのかな……。

そうだったら余計気まずい。


ていうかそもそも、佐賀くんとの会話全部聞かれてたよね!?

そっちの方が問題だった!




「てか、ミスターコン1位の人じゃん。チッ、なんでいっつもあんたばっかりモテんの?」




元カノさんは舌打ち混じりに吐き捨てた。


……やっぱり聞かれてたか。



ちらりと佐賀くんの表情を伺うが、佐賀くんは顔を真っ青にさせて俯いていた。


は、恥ずかしいよねやっぱり。

すごい絶望オーラが漂ってる……。




「あんた今藍くんと付き合ってんだよね。さすがにミスターコン1位には揺らいだ?」


「え……ゆ、揺らがないっ」



言ってから私ははっとする。


佐賀くんもいるのに、私……。



慌てて佐賀くんに顔を向けると、佐賀くんは「大丈夫」と言わんばかりに首を振っていた。

……佐賀くん。


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