爽やかくんの為せるワザ




……はっ!

ていうか私藍くん以外の人に抱き締められちゃってる……。




「……あ、ごめん……」




佐賀くんは私の気持ちを察したかのようなタイミングで私から離れた。


離れるとようやく佐賀くんの表情を見ることができて、

佐賀くんのその白い顔は真っ赤に火照りまくっていた。



……本当に告白されたんだ、私。


でも私には藍くんがいる。

佐賀くんの気持ちには応えられない。



……でも、すごく違和感があるんだ。




「あ……返事は分かってるから、言わなくていいよ……」


「……」




私達の間には変な緊張感を持つ沈黙が流れた。



……そうだ。

私、薄々佐賀くんの気持ちに気付いてたのに何も拒否反応が出なかったんだ。


今までは、本当に好きな人以外の男の人とは必要以上に仲良くなれなくて、

それ以上の関係になるかもって気付いた時には自然と拒否反応が出てた。



好きな人で、拒否反応が出なかったのは藍くんが初めてだった。


……でも、佐賀くんは?



私、佐賀くんに好意を示されたってどこかで気付いてたのに、


拒否反応なんて……全然出なくて。



これって……今までの経験からすれば、佐賀くんのことも好きってことにならない?




「……?成瀬さん?」




俯く私の顔を覗き込む佐賀くん。



……何それ。

そんなわけ、ないよね?



私は藍くんが好きだもん。

本当に本当に大好き。



……でも、佐賀くんのことも好きだ。

もちろんそれは友達として。


って、自分では思ってたんだけどな……。



……なんて勝手なんだろ。

私って、ほんとに最低な女だ……。


< 242 / 311 >

この作品をシェア

pagetop