爽やかくんの為せるワザ



はっ、それじゃあ藍くんは元カノさん達とのやり取りも全部聞いてたってことなのか。


……私他に何言ってたっけ。

今更ながら恥ずかしい……。




「……カップルでどっちも盗み聞きしてんじゃねーっつの。あーあ、何この茶番」




じとーっと私達を見つめて呆れたような声を出す元カノさん。


すると佐賀くんも藍くんのそばまで駆け寄って来た。




「……う、羽水くん……その……ごめん」




なんとか藍くんに顔を向けたまま話していたが、途中で俯いてしまった。

藍くんはそんな佐賀くんの言葉にきょとんとする。




「……あぁ、いいよ佐賀くん。珠姫ちゃんを好きになる気持ちは俺が1番分かるしさ。

ていうか顔はもう大丈夫?鼻血止まったんだね」


「え……あ、うん……」


「そっか、良かった」




爽やかな藍くんスマイルが飛び出し、きっとその場にいた全員が圧倒されたと思う。


こんな時でも気遣いを忘れない藍くんは本物の優しい人だ。



……やっぱり、私はこの人を好きになって本当に良かった。




「……佐賀くん?だっけ。もうこの2人は諦めた方がいいんじゃない?割り込む隙すらないわ」




溜息を漏らす元カノさんの口角が少しだけ上がっているようにも見えたけど、どうだろうか。



……佐賀くん、好きになってくれてほんとにありがとう。


私は藍くんが大好きだから気持ちには応えられないけど、

きっと佐賀くんには私より良い人がいるから。



……ごめんね。




「……うん。お似合いだしね……」




元カノさんへ優しく微笑んだ佐賀くん。


あの佐賀くんが初対面の人とこんな風に笑顔で会話をすること自体すごい成長なんだろうけど、ここは空気を壊しかねないので言わないでおこう。



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