爽やかくんの為せるワザ



ドアに背中を向けるよう座っていたであろう藍くんは、少し気まずそうに笑って立ち上がる。


……な、なんで藍くんがここに?




「えっと……佐賀くんと珠姫ちゃんが心配で様子見に来たんだけど……入るタイミング逃しちゃって……」




私はすぐさま申し訳なさそうに話す藍くんのそばまで駆け寄る。

そして藍くんの顔を見て一瞬固まってしまった。


……あれ?

藍くんの目……少し赤い?


ていうか目もなんか潤んでるように――



――!?!?




「えっ!?藍くんどうしたの!?」




私は思わず声を大きくして藍くんに迫ってしまった。


ああああの藍くんが泣いてるなんて……!

一体何があったの!?



私の心配そうな表情にギクッとした様子の藍くんは「あー……」と少し目を泳がせてみせた。




「……さっきの会話聞こえててさ、珠姫ちゃんが俺のことそんな風に想ってくれてたんだってなって……なんか感動しちゃった」




「恥ずかしー」と、ぽりぽり指で頬を掻きながら照れるように俯いてしまう藍くん。


……そ、そういうこと……?



そしてそんな藍くんを見ていると、なぜか私の目からも涙が溢れて止まらなくなった。




「……って、えぇ!?なんで珠姫ちゃんも泣いてるの!?」


「わ、分かんないけど……なんか感極まってっ……」


「わぁ〜!ごめんごめん珠姫ちゃん!よしよし」




だーっと溢れてくる涙を拭っていると、藍くんもジャージの袖で一緒に拭ってくれた。



……あの藍くんが泣いてしまうくらいのことだったんだと思うと余計泣けてくる。


藍くんが愛おしくてたまらない。

そんな風に感動してくれる藍くんが大好きだよ……。


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