冷たいキスなら許さない
その時、ざわざわとした話し声と共にコツコツとハイヒールの音が響いてきて4人ほどの女性たちが連れ立って化粧室に入ってきた。

さすがの西倉恭香も高笑いをやめ「さっさと帰りなさいよ」と言い捨てて出て行った。
でも、彼女のカツカツと立ち去る足音までもが気位が高いようでとても耳障りだった。

震える顔を上げて鏡を見ると、そこには顔色が悪く化粧っ気もないグレーのパンツスーツに身を包んだ地味な女--私がいた。

ドブネズミ

西倉恭香の言う通りだ。何も間違ってはいないのかもしれない。


ーー余り遅くなると社長が心配する。しっかりしなくちゃ。

4年前も今もあの人は簡単に私のメンタルを打ち崩す。
悔しいのに反論一つできなかった。

パーティーはもう少し。頑張らないと。
両手でパンっと頬を叩き呼吸を整えて歩き出した。

社長が待っているはず。
化粧室から出ると、今度はいきなり横から誰かに腕をつかまれて柱の陰に引きずられる。
突然のことに悲鳴も出せないほど驚いて今、何が起きているのか理解できない。

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