冷たいキスなら許さない
「何があった」

低く凄みのきいた声。言葉に棘がある。それは私に向かって発されたものではない。私の背後にいる櫂に向けられたもの。

「・・・灯里さんが例のセクハラ常務に腕をつかまれていてーー」

「た、助けてもらったの!」
私は慌てて顔を上げて声を出した。

櫂があの先何と言うつもりだったかはわからない。でも、あの男から助けてもらったのは事実。
キスも偶然当たってしまっただけかもしれないし。
ホントにただ偶然唇が当たってしまっただけで・・・。

社長は私を片腕で抱いたまま櫂を見つめている。
櫂も口を開かない。

ど、どうしよう。この状況。

「悪かったな。怖い目に遭わせて」
不意に櫂から視線を外した社長が私を支えながら頭を撫ではじめた。

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