冷たいキスなら許さない
「灯里、目を覚ませ。おい」
肩を揺すられ、頬を両手で挟まれる。
んーーん・・・。

「灯里、しっかりしろ。目を覚ませ」

ーーー夢?夢か。
そっか、夢か。
私はもう櫂と離れたんだっけ。

だるくて目を開けることができない。

「しゃちょ・・・」
私を呼ぶ声と頬に触れるごつごつした手は確かに大和社長のもので。
その腕に触れると、さっきのは夢で今はもう苦しまなくてもいいってことを理解して安堵する。 

「灯里」

そうだ、私はもう苦しまなくていい。
これは過去の夢。

櫂と別れて4年。フォレストハウジングの社長のもと一緒に働いて働いて働いて。

今は社長からの信頼も勝ち取っていると思うし彼の庇護のもとで仕事をしていけば何があっても大丈夫な気がする。

大和社長

伸ばした手の先に社長の存在を確認して私は安心して眠りについたーーー



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