冷たいキスなら許さない
私の大声は会議室の外にまで響き渡ったに違いない。
あーあと下北さんが頭を抱え、首を左右に振る。
「大和のせいだからな。何とかしろよ」手にしていたティッシュペーパーの箱を社長に押し付けて部屋を出て行ってしまった。
もちろん、きっちりドアを閉めて。

「灯里」
言われっぱなしの社長が口を開いた。
「お前、顔ぐちゃぐちゃ」

「っるっさいっ。誰のせいだとっ」

ティッシュペーパーの箱を持って近付く社長に
「もう私に用はないんでしょ。さっさと本命の女のところに行ってイチャイチャでも結婚でもすればいいじゃん。おまけにカナダだか何だか知らないけど、どこにでも誰とでも早く行けば。行っちゃえ」
思いっきり言い捨てて出て行こうとドアに向かって早足でカツカツと足を踏み出した私。

「待て、待て、待て。言い逃げか、お前」

慌てて社長が私の前に立ちはだかった。

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