冷たいキスなら許さない
それから何とか気力を振り絞って、飯嶋邸の現場視察を終え、会社の駐車場に車を入れるとすぐに社長から電話がかかってきた。

「視察終わったか?」

余りのタイミングにちょっと怖くなる。
「なに、エスパー?車のギアをパーキングに入れたら電話とか。社長どっかで見てます?まさかストーカー?」

「あほか。だいたいのスケジュールは知ってるんだからこんなもんかなと思っただけだ。
お前な、自分とこの社長に対してストーカーとかいう社員は世界中探しても灯里だけじゃないのか」

「これは大変失礼いたしました。わが社の社長サマ、何かわたくしにご用が?」

「いや、お前、午前中の電話の時の様子がおかしかったから。なんかあったんじゃないかと思ってさ」
わざと明るく声を出しても社長にはわかってしまうらしい。

「・・・社長。当たりです。でも、プライベートなことなのでソレ、触れないでください。仕事に支障はきたしませんから」
さすが社長。鋭い。

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