転生少女が落ちたのは、意地悪王子の腕の中~不器用な溺愛は何よりも甘いのです~
一見すると独り善がりのように感じる言葉。でも私のことを心配しているのが声色からも口調からもひしひしと伝わってきた。

彼がそう望むのなら、それでもいい。だから私はそう伝えようとして喉を震わせようとした。けれど、それを遮るようにグイードは口を開いた。

「……が!だからこそお前には思うようにやってほしい。そんなことをしたらお前ではなくなるからな」

「え……」

「いい加減お前のことはわかっているつもりだ。何と言っても、後先考えず少女一人助けるためにトラックとやらに飛び出して、別世界にまで来てしまうような女だからなぁ……」

グイードは酷く嬉しそうに苦笑して首を横に振った。

「それは俺が好きなところだから、いい。
ただ……その無鉄砲さが他の誰でもなく俺だけに向けられればいいと……そう思っているだけだ」

彼が口にしたそれはきっと独占欲。素直じゃないけど、だからこそ何より真っ直ぐに胸に届く。

……真っ直ぐ過ぎて、苦しい。

私は上目遣いに彼を見やった。

「……グイードこそ、私がどれだけあなたのことを想っているのか……わかってないと思いますよ?」

ほう、とグイードは呟く。

「お前の夫は花嫁の愛情表現が乏しいせいではないかと言っているようだが?」

彼がそう嘯くのは予想できていた。だから私は────横に座る彼の肩を掴んで、頬に強く唇を押しつけた。

ゆっくりと離れると、至近距離で見詰めるアガットの瞳が煌々と輝いていた。妖しく煌めく赤が緩やかに三日月を描く。

吸い寄せられるようにいつの間にか再び顔が近づいていたことに気がついて、私は慌てて身体を引いた。

「こっ、これで……わかりましたか?」

「……まさかこれで終わりのつもりなのか?」

グイードが私の腕を掴んでぐいと引っ張った。強い力ではなかったのにびっくりするほど抵抗する力が湧かなくて、されるがままに彼に抱き寄せられる。
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