ただ好きだから
ここまできたら…気合いで負けたらお終い。
大理石の床に響くヒール音がやけに大きく聞こえる。まるで自分の心臓の音みたいだ。
一面ガラス張りの窓からは、この街一面の景色が見下ろせるほどで、立派なデスクで余裕気に笑みを見せる男の前で私は足を止めると、自分でも驚くほどやけに冷静に言葉を落とした。
「社長、お呼びでしょうか」
そんな私の言葉に、社長はやはり何処か可笑しそうに笑うと
「結婚相手にやけに冷たいんだな」
切れ長な目を細め妖美に微笑む。
結婚相手…
その言葉を聞いて、やはりあれは聞き間違いでも夢だったわけでも無いと気がつく。
でもだからと言ってそれを理解するのは私には到底無理な話で…
「あの…この間から一体、それはどういう意味なんでしょうか…」