ただ好きだから
「つまり、俺の偽婚約者をして欲しい」
偽婚約者…!?
「期限は一年で良い。一年も仲を見せつければさすがに会長も見合いは諦めるだろ」
「いやいや、何言ってるんですか偽の婚約者って。そんなの出来るわけないじゃないですか」
「なら、この前のスーツ代払うか?ついでにあの時車と時計も汚れたんだったな」
「ちょっと!それを出してくるなんて卑怯です!しかも増えてる…」
「どちらを選ぶかは任せる」
社長はゆっくりと高級そうな椅子から立ち上がり私の前で足を止めると、そっと私の右頬に手を伸ばしてくる。
「ただ、婚約者になってくれるのであれば俺はお前を大切にする。この一年嫌というほどな」
スーツや車の金額を考えただけで頭痛がする。
瞬きをするのを忘れてしまうほど、社長は妖美に目を細めて笑うと。
「…わかり…ましたよ」
そう答えた私の言葉を聞いて、嬉しそうに微笑んだ。