ただ好きだから



社長室から戻る途中、何度ため息が漏れ出たか分からない。



デスクに戻ると、部長がやけにアイコンタクトを心配気に送ってきて。口パクで「大丈夫です」と言うと、大袈裟なほどホッとしたような顔で私に笑顔を向けた。



まぁ、自分の所の部下が社長を怒らせたとなったらそれは気が気じゃないよね。


だけれど部長、実は私 社長を怒らずよりもよっぽど恐ろしい事をしてしまいました……まぁもちろんそんな事言えるわけもないけれど



まさか社長の婚約者になったなんて言えるわけないけれど。


しかも偽物の婚約者だなんて…



これから先一体どうなるのか……どんな事をさせられるのか。



想像しただけで恐怖で背筋が凍りそうだ。



私、まともにテーブルマナーさえきちんと出来てるのか怪しいのに…そんなんで社長の婚約者が務まるんだろうか。



あの気品に溢れている人の隣に立っていられるんだろうか……



どう考えたって私と社長とじゃ不釣り合い極まりないというのに……


本当、なんでこんな事になってしまったんだろう。

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