ただ好きだから



「疲れたー、足痛いし」



自宅マンションのエントランスキーを開けてエレベーターへと乗り込む。



買ったまま履いていなかったヒールを先日引っ張り出してきて、それで出勤したせいかやけに足が疲れてたまらない。



自分の降りる階に着き、2つめの扉。そこへ鍵を差し込みゆっくりとドアノブをひねった。



「え…何これ…どういう事」



私の目の前に広がるのは何もない空っぽの部屋



訳がわからないとかの次元を超えている。



「もしかして、部屋間違えた?」



そんなことを一人ケラケラと笑いながら、もう一度玄関から外へ出て部屋番号を確認するけれど。
やっぱり間違えているはずも無く。



というか鍵を開けた時点で間違えてるわけがなくて。



「待って待って。状況が理解出来ない」



私家賃滞納してた……?それで管理会社に荷物捨てられたとか?


そんなわけない…だって家賃は引き落としのはずだし。貯金だって一応ある。なのに…何で…?



何にも無い空っぽの部屋で一人立ち尽くすようにして、一生懸命頭を働かせるけれど、やっぱり自分で答えを見つけ出すことなんて出来なかった。



だけどそんな私の元に、まるで何かを見ていたかのようなタイミングで静かな部屋に着信音が鳴り響く。



< 29 / 66 >

この作品をシェア

pagetop