ただ好きだから
いつもより少し着崩されたスーツは、ネクタイを緩め腕を軽くまくっている。
そして呆れたように不機嫌そうなその表情は眉を歪ませ私を見下ろしていた。
だけどその姿が、どことなく私を待ちわびていた恋人のようで思わずドキリと心臓が脈を打つ。
どこまでも顔の良いこの男はきっとこんな感じでたくさんの女性を虜にしてきたんだろう。
会社の女性社員達が騒ぐのも無理はない…
だってこんな不機嫌そうな顔ですら絵になるのだから。
「入れ」
大きく開かれたドアに一歩足を踏み入れると、それを確認した社長はそのままリビングへと入っていく。
それに着いて行くようにしてリビングへと入ると目の前の光景に目を見開いた。
キラキラと輝く夜の街が一望できる大きなガラス窓。この前は朝だったから気がつかなかったけど、ここは最高級の高層マンションだ。
思わずその素敵な景色に釘付けになる。
「ここに座れ」
ダイニングの側で立っていた社長が、外の景色を唖然と見ている私に視線で椅子へ座るよう支持した。