ただ好きだから
「椎名さん!この前頼まれたデータ集めといたよ」
「ありがとうございます!すぐ確認しますね」
書類を受け取ってデスクに置くと、打ち込んでいたパソコンの画面へと視線を戻す。
「今日も残業?」
かじりつくようにしてパソコンの画面を見ていると、マウスの隣へコトンと小さな音を立ててコーヒーマグが置かれる。
「あ、幸恵ありがとう。もちろん残業ですとも」
椅子へと深く座り直しコーヒーを口に運ぶと、幸恵も自分のデスクに座って椅子をこちらへクルリと回した。
「ここの所毎日だね、一体何時に帰ってるの?」
「んー、日付け変わる前には帰ってるよ」
今週に入って本格的なプロジェクトが始まり、うちの課は多忙なメンバーで溢れかえっている。
もちろん初めてチームリーダーを務める私は、初めてずくしで容量もやっと掴めてきたばかり…毎日帰るのは課の中でもビリッケツだ。
それでも頑張れているのは、初めての私に一生懸命サポートしてくれる先輩や一緒に頑張ってくれるチームの皆んなのおかげだ。
残業だろうと嫌な顔一つせず、毎日業務に励んでいる。こんな職場きっとそうはないと思う。
だから私も皆んなの期待に応えたい。チームリーダーを任せてもらっているんだから。
一つ問題があるとすれば、ほとんど咲夜に会えていないという事。
今週に入ってからというもの、一度も咲夜と夜ご飯を食べれていない。
正直今は咲夜との約束を破る形になってしまっているけれど…彼もそれはもちろん理解してくれていて、残業する事を連絡をすると『頑張れよ』とシンプルではあるがメッセージをくれる。


