青い鳥
『ごめんね、バイトもあるし、これからも友達と約束があるの。また今度。じゃあね』


返信する必要が無いように強引にメールを終わらせ、携帯を仕舞うと再び歩き出す。

これから約束なんて無い。
ただ自分のアパートに帰るだけ。

母のことを頭から追い出したくて、私は先程の思考回路へと逃げ戻ることにした。

もう一人の『今井律』はどんな人かな。

私と違って幸せな人生を送っているのかな。

あ、でも年賀状にそろそろ幸せになれよって書いてあったから、私とあまり変わらないかもね。

それに『結婚』のワードが出てたからそこそこの年齢だね。

そんな事を考えていたら赤信号に捕まってしまって、手持ち無沙汰な私は徐に空を仰いだ。

空には水分をたっぷり含んでいそうな重めの雲が浮いている。

その中に探し物が紛れ込んでいるかもしれないと目を凝らして探してみるが、やっぱり私の探し物は居ないよう。
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