しあわせ食堂の異世界ご飯2
(キノコ、大きなキノコを見つけなくちゃ!!)
 せっかくカミルや常連さんに情報をもらったのに、それをまったく生かすことができなかった。
 最後である三つ目のポイントは、山の中腹より少し先なのでシャルルが向かってくれている。おそらく、アリアが一緒に行くより早くたどり着くだろう。
 しばらく歩いていると、木の根元にキノコがあるのを発見する。
「あった!」
 すぐにしゃがんで収穫すると、横にも大きなキノコがあった。どうやら、葉に隠れていて今まで誰も気づかなかったようだ。
 目測になるけれど、シンシアが持っていたものより一回り大きい。これでシンシアに勝てる可能性が出てきたので、ほっと息をつく。
 こうなると気になってくるのが、セレスティーナの状況だ。アリアより大きなものを収穫している可能性だってあるし、何より優秀な騎士が配下にいる。
「でも、広い山の中でセレスティーナ様を探してる時間はない……か」
 今は出口へ向かいながらキノコを探していくしかない。そう思ったのだが、アリアはあっけなくセレスティーナを見つけてしまった。
 というのも、少し開けた場所にセレスティーナがいたからだ。
 彼女は山の中に置かれた椅子に座り、自分の騎士たちにキノコを探すよう指示を出している。
(え? ずるくない?)
 さすがにその発想はなかったと、アリアはため息をつく。
 せめて一緒に探そうという気持ちはないだろうか。
 あまり関わりたくないので、体を屈めながら低い木の後ろをそっと通り抜ける。これならきっと、気づかれないだろう。
 通り過ぎる際に、セレスティーナと騎士の話し声が聞こえてきた。
『あら、このキノコはとても大きいわね。どこにあったの? 山頂近くかしら』
『いいえ。山の浅い場所にありました。ちょうど、ここから西の方向へ歩いたところです。少し草木が険しいので、見つけるのは難しいと思います』
 そう言った騎士は、シンシアよりも大きなキノコを持っていた。つい先ほどアリアが見つけたキノコと比べると、いい勝負かもしれない。
(このままだと、勝てるかわからない……)
『その先にも同じように大きなキノコが生えていたのですが、道が狭くて私では通れなかったのです。山を傷つけるのは本意ではないと判断し、何もせず戻ってきました』
 騎士の言葉を聞き、もしかして自分なら通れるかもしれないとアリアは考える。セレスティーナに報告している騎士は体つきががっしりしているし、背も高い。
『いいわ、このキノコがあれば。シンシア様とアリア様のキノコはこれより小さかったと報告を受けているから、わたくしはこのままで問題ないもの。もう下がってよくてよ』
『ハッ!』
 騎士が敬礼をし、後ろに控える。
 どうやら、セレスティーナは騎士たちにアリアとシンシアを偵察させていたようだ。全員の収穫したキノコを把握し、自分が優勝するかどうかしっかり見極めている。
 予想以上に、人員を投入していた。
(ひとまず、セレスティーナ様はあのキノコで勝負をするってことよね? なら、私は騎士の言っていた大きなキノコがある場所まで行こう)
 それを手に入れることができたら、アリアの優勝は間違いないだろう。
(セレスティーナ様の情報を盗み聞きしたみたいで申し訳ないけど……)
 アリアはセレスティーナたちに気づかれないよう、ゆっくりその場から離れた。

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