しあわせ食堂の異世界ご飯2
この声の主を、シャルルが聞き間違えるわけがない。
「アリア様……!!」
すぐに何かあったのだと判断し、走る速度を上げる。声が聞こえたのだから、そう距離があるわけではないだろう。
木々の間を飛ぶように抜けた先――猪から逃げる人影が視界に入る。
「この辺に動物はいないっていう話だったのに!」
それとも、西側は人が少ないから猪が逃げるように来てしまったのだろうか。シャルルは唇を噛みしめながら、必死に走る。
けれど、シャルルがアリアの下へ行くより猪が突進する速度の方がはるかに速い。
逃げようとしたアリアは飛び出た木の根っこに足をひっかけて転び、どうあがいても猪の突進を避けられる体勢ではない。
「アリア様……っ!!」
もう間に合わない!
シャルルの悲痛な叫び声と同時に、黒い影がアリアと猪の間に飛び出した。
「アリアっ!」
そこから先は、一瞬だった。
その影が猪を剣で斬りあげると、その巨体が宙に舞う。そのままドーンと大きな音を立てて、地面に落下した。
たった一太刀で、巨大な猪を倒してしまったのだ。
まさに圧巻、すごいという一言しか出てこない。
「はぁ、はあ……よかった、アリア様……」
シャルルはアリアが無事に助かった安堵から、地面に座り込む。けれど同時に、自分がいながらアリアを危険な目に合わせてしまったと悔やむ。
なにが護衛もできる侍女だ、笑わせる。
ぐっと自分のこぶしを握りこむと、爪が食い込んでわずかに血が流れるが……そんなことは気にしない。そのこぶしを振り上げ、地面に叩きつけようとしたが――振り上げた腕を、後ろから掴まれた。
「自分を傷つけるのは、関心しませんね」
「え……?」
シャルルが慌てて振り返ると、苦笑するローレンツが立っていた。
「駄目ですよ、シャルルさん。そんなことをしては、アリア様も悲しみますよ」
「ローレンツさん……どうして、ここに」
「…………」
シャルルの問いかけには答えず、ローレンツは膝をついてシャルルの手のひらを見る。水魔法で傷を洗い流して、ポケットから取り出したハンカチを巻く。
「応急処置です」
「えっと、ありがとうございます。それから、ごめんなさい」
「いいですよ。さ、私たちも合流しましょう」
ローレンツはシャルルを慰めるように気遣って、アリアがいる方へと歩き出した。
***
「アリア様……!!」
すぐに何かあったのだと判断し、走る速度を上げる。声が聞こえたのだから、そう距離があるわけではないだろう。
木々の間を飛ぶように抜けた先――猪から逃げる人影が視界に入る。
「この辺に動物はいないっていう話だったのに!」
それとも、西側は人が少ないから猪が逃げるように来てしまったのだろうか。シャルルは唇を噛みしめながら、必死に走る。
けれど、シャルルがアリアの下へ行くより猪が突進する速度の方がはるかに速い。
逃げようとしたアリアは飛び出た木の根っこに足をひっかけて転び、どうあがいても猪の突進を避けられる体勢ではない。
「アリア様……っ!!」
もう間に合わない!
シャルルの悲痛な叫び声と同時に、黒い影がアリアと猪の間に飛び出した。
「アリアっ!」
そこから先は、一瞬だった。
その影が猪を剣で斬りあげると、その巨体が宙に舞う。そのままドーンと大きな音を立てて、地面に落下した。
たった一太刀で、巨大な猪を倒してしまったのだ。
まさに圧巻、すごいという一言しか出てこない。
「はぁ、はあ……よかった、アリア様……」
シャルルはアリアが無事に助かった安堵から、地面に座り込む。けれど同時に、自分がいながらアリアを危険な目に合わせてしまったと悔やむ。
なにが護衛もできる侍女だ、笑わせる。
ぐっと自分のこぶしを握りこむと、爪が食い込んでわずかに血が流れるが……そんなことは気にしない。そのこぶしを振り上げ、地面に叩きつけようとしたが――振り上げた腕を、後ろから掴まれた。
「自分を傷つけるのは、関心しませんね」
「え……?」
シャルルが慌てて振り返ると、苦笑するローレンツが立っていた。
「駄目ですよ、シャルルさん。そんなことをしては、アリア様も悲しみますよ」
「ローレンツさん……どうして、ここに」
「…………」
シャルルの問いかけには答えず、ローレンツは膝をついてシャルルの手のひらを見る。水魔法で傷を洗い流して、ポケットから取り出したハンカチを巻く。
「応急処置です」
「えっと、ありがとうございます。それから、ごめんなさい」
「いいですよ。さ、私たちも合流しましょう」
ローレンツはシャルルを慰めるように気遣って、アリアがいる方へと歩き出した。
***