しあわせ食堂の異世界ご飯2
 リベルトも食い入るようにそれを見て、はっとする。
「そういえば大会の途中だったな」
「はい! あれなら、優勝間違いなしですね」
「だろうな」
 あそこまで大きなキノコ類が収穫できるという話は、リベルトもここ数年聞いたことがない。
 巨大椎茸を狩るためにリベルトが歩き出すと、「アリア様~」と呼ぶ声が響く。
 声のした方を見ると、シャルルとローレンツがいた。
「シャルル!」
 アリアがシャルルを呼ぶと、嬉しそうに破顔した。
 そしてアリアの下へやってきたシャルルは、膝をついて頭を下げる。
「アリア様、ご無事で何よりです。リベルト陛下とローレンツさんには、感謝をしてもしきれません」
「気にするな」
「シャルル……」
 真剣身を帯びたシャルルの声に、アリアはドキリとする。
 それはいつものふわふわした様子ではなく、今までシャルルが騎士として過ごしてきた姿だ。
 アリアを助けることができず悔やんでいるのが、痛いほどにわかる。
 自分の勝手でシャルルに迷惑をかけてしまったことに、アリアは主人として最低だったと自覚する。
「リベルト陛下、降ろしていただいてもいいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます」
 アリアはまだ少し震える足で地面に立ち、頭を下げたままのシャルルの前へと行く。
 シャルルはアリアが妃候補としてジェーロに行くと決めたとき、騎士を辞め、侍女になった。
 その主人は、アリアだ。けれどシャルルは、侍女でもあり、同時に騎士としての誇りをまだその胸に秘めていた。
(そのことにちゃんと気づかないなんて、主人失格かもしれないわ)
 騎士は騎士団に所属、侍女との兼業はできない。
 そんなものは、くそくらえだ。
 アリアはワンピースの裾をめくりあげて、太ももの位置に隠し持っていた護身用の短剣を手に取る。これはエストレーラの王族が持つもので、王家の紋章が刻まれている由緒正しき短剣だ。
「シャルル。あなたはわたくしの侍女であることに間違いはないわ。けれど、その誇りはわたくしの騎士だと思ってもいい?」
「……アリア様?」
 アリアの言葉を聞き、シャルルは息を呑む。

「シャルル、わたくしの騎士になってちょうだい」

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