しあわせ食堂の異世界ご飯2
(これからは、私がこうやってご飯を作ってあげたいな)
「アリアの料理は、どれも不思議で、全部美味いな」
「ありがとうございます。リントさんが食べたいって言ってくれたら、どんな料理だって作ってみせますよ」
 前世の知識があるので、基本的に作れないメニューはないとアリアは自負している。材料によっては厳しいものもあるかもしれないけれど、代替品で料理をすることも珍しくはない。
「それは頼もしいな」
「ジェーロには、エストレーラになかった食材も多いですからね。きっと、世界にはまだまだ私の知らない食材もあるんだと思います」
 いつの日かそのすべてを食べたいと告げると、リントは笑う。
「本当に、アリアは料理が好きだな」
「いいじゃないですか。美味しいご飯を食べられるのは、幸せと同義ですよ」
「それはわかっているさ」
 今までは料理にあまり興味はなかったし、王城で出されるものは毒見したあとなので冷たいものばかりだ。
 生きるためにとりあえず食べる……という認識だった。
 わかっているなんて偉そうに返事をしたけれど、美味しいご飯を幸せだと感じたのは、アリアの手料理を食べたからだ。
「だから、そうだな……」
「?」
「アリアが望むのなら、いつか俺が世界中の食材を手に入れてみせよう」
 そうすれば、どんな料理でも作り放題だろう? と、リントは言う。
「作り放題どころか、まったく新しい料理だって作れちゃいますよ!」
「それは楽しみだな」
「そのときは、リントさんのためにとびきりの料理を生み出しますね。期待していてください!」
「ああ、期待している」
 そんな夢のような話をして、二人で笑う。
 会えなかった日々を埋めるように、アリアとリントはゆっくり会話をしながらふたりで食事をした。

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