しあわせ食堂の異世界ご飯2
しあわせ食堂の厨房の何倍も広い場所に、アリアはひとりぽつんと立っていた。
食糧庫には見たことのない様々な種類の野菜が常備されていて、冷蔵庫のように温度調節ができる倉庫の中には油の乗った美味しそうな肉のブロックが並んでいる。
料理人なら一度は夢見るような環境が、アリアの目の前に広がっているのだ。思わずテンションが上がって、顔がにやにやしてしまうのは仕方がない。
そう、ここはジェーロの王城にある――厨房だ。
アリアはローレンツのお願いを受けて、ここにいる。
「とりあえず、料理をしちゃおう」
本日メインに使う食材は、柚子。
そのほかに、鶏肉、キノコ類、野菜をたくさん用意している。寒い日に温まる、鍋料理だ。
土鍋にだし汁を入れて、火にかける。味を調整してから鶏肉を入れ、灰汁を取ったらキノコ類と野菜や豆腐を入れる。
最後に入れる柚子は輪切りにしておいて、ひと煮立ちしてから加えるのだ。
「あとは、お米を炊いてそれをおにぎりにすればオッケーかな?」
鍋とおにぎりなので、やることはあまりない。
少し待ちの時間になってしまったので、アリアは椅子に座って一息つく。
(料理ができあがったら、食べてくれるかな?)
この料理を食べさせる相手を思い浮かべて、少し不安になる。
別に喧嘩をしたりしているわけではないけれど、少しだけ関係がぎくしゃくしてしまったような気がするのだ。
コトコト煮込んでいる鍋を見て、アリアは家族やシャルルたちと食べていたことを思い出す。日本ではひとり鍋……なんていうのも人気があったが、家族や友人と食べる鍋はやっぱり格別だ。
一緒に食べることを許してもらえているのが、安心感に繋がっているように思う。
「あっと、柚子を入れないと」
お鍋の中へ一面に柚子を敷き詰めると、すぐにただよい始めた風味に少しだけ心が安らいだ。
蓋をしてからもうひと煮立ちさせて、魔道具の火を止める。
本日のメニュー、『皇帝とシェフの柚子鍋』の完成だ。
「あとはおにぎりをお皿に盛りつければできあがりっと」
料理をすべてにトレイに載せ、アリアは厨房を後にする。目指すは、ローレンツから教えてもらったリベルトのプライベートルームだ。
来客があった際に使えるよう、自室とは別にそういった部屋がいくつか用意されていると教えてもらった。
今はそのうちの一室に、リベルトがいるらしい。
「そこに私が料理を持って行ってあげる……と」
ローレンツのお願いとは、リベルトに『ゆっくりする時間と美味しい料理』を提供してほしいということだった。
というのも、アリアと謁見をしてからのリベルトは――それは鬼のように、仕事を詰め込んでいるのだという。
睡眠時間と食事は最低限、あとはずっと仕事仕事仕事だ。
ブラック企業か!
と、アリアが思わず心の中で突っ込みを入れてしまったのも致し方ないだろう。
アリアにしかリベルトにゆっくりできる場所を提供できないから、お願いしますと頼まれてしまったのだ。
食糧庫には見たことのない様々な種類の野菜が常備されていて、冷蔵庫のように温度調節ができる倉庫の中には油の乗った美味しそうな肉のブロックが並んでいる。
料理人なら一度は夢見るような環境が、アリアの目の前に広がっているのだ。思わずテンションが上がって、顔がにやにやしてしまうのは仕方がない。
そう、ここはジェーロの王城にある――厨房だ。
アリアはローレンツのお願いを受けて、ここにいる。
「とりあえず、料理をしちゃおう」
本日メインに使う食材は、柚子。
そのほかに、鶏肉、キノコ類、野菜をたくさん用意している。寒い日に温まる、鍋料理だ。
土鍋にだし汁を入れて、火にかける。味を調整してから鶏肉を入れ、灰汁を取ったらキノコ類と野菜や豆腐を入れる。
最後に入れる柚子は輪切りにしておいて、ひと煮立ちしてから加えるのだ。
「あとは、お米を炊いてそれをおにぎりにすればオッケーかな?」
鍋とおにぎりなので、やることはあまりない。
少し待ちの時間になってしまったので、アリアは椅子に座って一息つく。
(料理ができあがったら、食べてくれるかな?)
この料理を食べさせる相手を思い浮かべて、少し不安になる。
別に喧嘩をしたりしているわけではないけれど、少しだけ関係がぎくしゃくしてしまったような気がするのだ。
コトコト煮込んでいる鍋を見て、アリアは家族やシャルルたちと食べていたことを思い出す。日本ではひとり鍋……なんていうのも人気があったが、家族や友人と食べる鍋はやっぱり格別だ。
一緒に食べることを許してもらえているのが、安心感に繋がっているように思う。
「あっと、柚子を入れないと」
お鍋の中へ一面に柚子を敷き詰めると、すぐにただよい始めた風味に少しだけ心が安らいだ。
蓋をしてからもうひと煮立ちさせて、魔道具の火を止める。
本日のメニュー、『皇帝とシェフの柚子鍋』の完成だ。
「あとはおにぎりをお皿に盛りつければできあがりっと」
料理をすべてにトレイに載せ、アリアは厨房を後にする。目指すは、ローレンツから教えてもらったリベルトのプライベートルームだ。
来客があった際に使えるよう、自室とは別にそういった部屋がいくつか用意されていると教えてもらった。
今はそのうちの一室に、リベルトがいるらしい。
「そこに私が料理を持って行ってあげる……と」
ローレンツのお願いとは、リベルトに『ゆっくりする時間と美味しい料理』を提供してほしいということだった。
というのも、アリアと謁見をしてからのリベルトは――それは鬼のように、仕事を詰め込んでいるのだという。
睡眠時間と食事は最低限、あとはずっと仕事仕事仕事だ。
ブラック企業か!
と、アリアが思わず心の中で突っ込みを入れてしまったのも致し方ないだろう。
アリアにしかリベルトにゆっくりできる場所を提供できないから、お願いしますと頼まれてしまったのだ。