クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
千石くん……孝太郎はスペインで頑張っている。彼と友人の会社は立ち直り、順風満帆。埋もれているアーティストと買い手を結びつけるプロデュースは、絵画や音楽、彫刻や建築物まで幅広い。

さらに孝太郎は、昨年新しい事業を立ち上げた。個人や法人の買い手が買い付けた作品の管理を取り仕切っているそうだ。具体的には世界中に所在は明かさずに管理の行き届いた倉庫を持ち、そこで芸術品や高価な嗜好品の管理をする。これらは買い手の資産でもあるので、場合によっては専門家から資産運用のアドバイスもする。これが好評を博し、孝太郎は一段と忙しくなった。

この2年、私は2度スペインを訪れ、彼や彼の仲間と会った。孝太郎は私をパートナーだと紹介してくれ、彼の仲間たちは私を家族のように受け入れてくれた。
孝太郎本人も2度帰国している。お父様の社長はまだ彼が選んだ道をよく思っていないみたいだけれど、家族で食事したり話したりはするようなので、いずれ雪解けするのではないかと涼次郎くんが言っていた。

ちなみに、私と孝太郎が交際中なのは、社長の知らないことだ。知っていたら、私の昇進もなかったかもしれないなぁと漠然と思う。

孝太郎は28歳、私は32歳。彼はまだまだやりたいことがあるみたいだ。スマートなのに野心家で、いつも瞳の奥は野生の力を溢れさせている。
そんなパワーを愛しく思う。2年経っても色褪せることなく彼に惹きつけられる。

だから、私はいつまで待ってもいいのだ。
彼とずっと離れることなく共に居られるのは理想だけど、それは年を取ってからだっていい。
彼には夢があり、私にはやりがいある仕事がある。

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