クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「あれ?どうしたの?」

気付くと横手さんが私のデスクの隣に立っていた。その向こうには泉谷さんもいる。

「阿木さんをお昼ゴハンに誘いに来ました」
「ふたりで?」

確かにあと1、2分で昼休憩だけど……。秘書課のふたりがなんでそろってやってきたの?それぞれとはお昼食べに行ったことはあるけど、三人ってことはなかったよね、今まで。

何が何やらわからない。よく見ればオフィスに人が増えている気がする。
秘書課に管理課……。総務部長や井戸川課長といった昼休憩の5分前にはフライングで昼食に行ってしまうメンバーも揃っている。さらに持田さんが入室してきて、山根さんを小突いているのが見える。

あれ?今日って何かあるんだっけ。イベント?ミーティング?
社長が急に現れることはあるけど、そんな話も入ってきてないし。

時計が12時の昼休みを指した。その瞬間オフィスのドアが勢いよく開いた。
もう誰よ、乱暴に開けたのは。顔を上げた私は、そこに思わぬ人物を見つけ、固まった。

開け放ったドアから千石孝太郎が現れたのだ。

ここの社員をしていた時のようなスーツ姿で、手には大輪の薔薇の花束を持っている。
オフィスにいた面々が立ち上がる。

「阿木さん、こちらへ」

横手さんが驚いている私の腕を引き、ドアの正面最奥の窓側に誘導した。
孝太郎が近づいてくる。一歩一歩、私を見つめて。
なにこれ、なにが起こってるの?
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