クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「千石さん、御曹司だけど中途入社ですもんね。ボーナスまだ出ないですもんね。真純先輩に高~いディナーねだるといいですよぉ。ね、真純先輩」

ニコッと笑いかけた山根さんを見て、私は驚いた。

わかったぞ、この子、空気読めないフリしてる。
私と千石くんをふたりで食事に行かせようとしてる!

若くてゆるふわの新入社員じゃない。恋愛に敏感な今時女子だ。
きっと、とっくに千石くんのアプローチに気づいてるんだ。そして、千石くんを応援する気だ。

「孝太郎、何サボってんだよー」

割り込むようにひょこっと顔を出したのは、涼次郎くんだった。
兄が戻ってこないので探しにきたのだろう。この話はこれ以上できない。

「夜、ショートメールします」

すれ違う瞬間、小声で千石くんが言った。


その晩、千石くんからきたショートメールはこんな内容。

『次の土曜、六本木のセントラルコンチネンタルホテルのラウンジに18時。お待ちしてます』

待って待って待って!

もう、決めちゃってるじゃん!お断りも受け付けない!?

でも、確かにね。一度オーケーを出してしまったのは私だ。それを違えるのはよくない。
うん、そうだ。私は上司の責任を果たしにいくだけ。そう思おう。そう思わなきゃ、まともな頭で食事になんかいけない。

『私が出しますので、予約のみお願いします』

それだけ返信し、スマホをクッションにぶん投げ、ベッドにひっくり返った。

今週末……あああ、とりあえずどんな顔して火水木金働けばいいの?



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