クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「それは訂正が要りますね。あなたは近い将来、俺と付き合うことになりますから」

からかっているような口調にさすがに私も苛立ちがマックス。気づいたら立ち止まり、横を歩く千石くんを睨みつけていた。
こちらを見る千石くんはにっこり笑うだけ。

「怒った顔も可愛いと今朝言いました。今日は何度もあなたの顔を見られて幸せです。そのうち、もっといろんな顔を見せてもらいますから」

そう言うと、彼は路上であることを意にも介さず、私の頰にキスを落とした。
不意打ち過ぎて逃げらなかった……不覚。

「さて、これから父と食事なんです。ご一緒してくれますか?」
「絶対嫌」
「そう言うと思いました。タクシーでお送りしますよ」

片手を上げ流しのタクシーを停めると、強引に私を後部座席に押し込む。

「赤坂のエンパイアホテルまで。こちらの女性はその後にご自宅まで」

明らかに多過ぎる金額を運転手に渡して、彼は後部座席に背を預けた。

「スマートに送れなくてすみません」

スマートってどのレベルのスマート?
現金のこと?流しのタクシー?本当は運転手で送るべきってか?
駄目だ、世界観が違いすぎて、もうよくわかんない。

タクシーで帰宅した私は鈍りのように重たい身体で洗濯物を取り込んだ。
冷蔵庫を開けなんの食材もないことに気づき、買い物に行くのも面倒くさくなり、甘いカクテル風味の缶チューハイを一気飲みした。
ヤケにはなっていない。
でもものすごく疲れた。普段飲まないお酒を飲んじゃうくらい。

さほど飲めない私は疲労も相まって、20時前だというのにベッドに突っ伏して眠ってしまった。
化粧を落とさなかったこと、シャワーも浴びなかったことは、明日の朝たっぷり後悔しよう。



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