クールな御曹司の本性は、溺甘オオカミでした
「こうちゃんと私は結婚するんです!それを横入りしてさらっていこうとするなんて卑怯にもほどがあります!」

私の腕をぶんぶんと揺すり、憎しみを込めて怒鳴る横手さん。もうやめて。本当にやめて。
ここで私が言い返せば、見苦しいキャットファイトのスタートだ。とにかく彼女を落ち着かせなきゃ。

すると、なんというタイミングか。そこへ千石くんが山根さんと持田さんと連れ立って出社してきたのだ。
横手さんが私に掴みかかっている状況を見て、まず山根さんが叫んだ。

「横手!駄目だよ!何やってるの!」

持田さんも慌てて彼女を私から引きはがそうと実力行使に出る。しかし、山根さんと持田さんが後ろから羽交い絞めにしても、横手さんはがっちり私の両腕を戒め睨みつけてくる。その目には涙がいっぱい溜まっていた。

「愛梨、よしなさい」

低く小さな声で、千石くんが言った。それから千石くんが横手さんの腕を掴み、私から引きはがす。男性の力というより、千石くんだから横手さんは離したのだろう。

「ここは会社だろう。あまり幼い行動をとるなら、お父様にご相談差し上げなければならない」
「なによ……!」

横手さんが今度は千石くんに向かって怒鳴り散らそうとしたまさにその瞬間。

「はいはい、お騒がせしておりまーす」

総務部のオフィスに入ってきたのは隣の部屋・秘書課の面々だ。
中央に秘書課の女性課長・須藤(すどう)さん。その横に秘書課主査の泉谷(いずみたに)さんという男性と、ベテラン女性社員の星(ほし)さん。
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