月光
でも、それは私は勉強をしたから取れた成績であって、「勉強していないから」と同級生の部員の前で豪語するほど勉強をしなかったのが悪い。
悔しかったら勉強すればいいでしょ。
言いたかったけれど、とっくに保坂さんの周りには人が集まっていた。
中心で眩しく笑う保坂さん。
圧倒された。
見せつけられた。
私には、誰もいない。
「ねえねえ、富木島さん」
唐突に名前を呼ばれた。
名字で呼ぶ人なんていたっけ。
振り向くと、後ろに数人の部員を従えた保坂さんが笑って呼んでいる。
「……えっと、何?」
「そこ、どいて。
邪魔だから。」
「……ご、ごめんね」
なんで謝らなきゃならないんだろう。
広い廊下なんだから他の空いている場所を通ればいいのに。
心の中ではなんとでも言えた。
だけど、直接対峙すると怖かった。
みっともなくて、教室に戻った。