DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


光と影が反転した混乱状態の視界に、脳裏に、一瞬の出来事がコマ送りで焼き付いた。



ヘッドライトのド真ん中に人影が飛び込む。


人影は車に突っ込みながら三日月刀《シミター》を振るう。


車が凄まじい音を立てて転がる。


撥《は》ね飛ばされた人影がコンクリートの柱に打ち付けられる。



横転した車は火花を散らして地面を滑った。


さよ子のすぐそばを過ぎて、おれの隣をも過ぎて、別の車を巻き込んで壁に激突した。


目の端に、ごく小さなショッキングピンクの残像。



ガソリンの匂いがして、すぐさま爆発音がして、立ち上る炎の熱気がおれの頬を打った。


おれは振り向いて、引っ繰り返ってひしゃげた車を見る。



ナンバープレートを知っている。


誕生日。じゃあ、やっぱりあの車は。



おれは顔を背けた。


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